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小説ページにアップするのがめんどくなったのでこっちに投下。
オリジナルで少年二人。



綺麗だと思ったんだ。

初めて会った彼は、中庭で何気なく佇んで空を見ていた。
細身のフォルムを描く透明な立ち姿が、陽を透かしてきらきらと輝いている。
柄にもなく見惚れていると、彼の視線がつ、と俺を向いた。
「……君が、新しいパートナー?」
よく透る、ちょっと掠れたようなハスキーにどきりとする。
俺はわたわたと口を開き、慣れない挨拶を告げた。
「ああ……えと、ハジメマシテ」
「初めまして。よろしくね」
にこりと微笑んだ拍子に、ちかりと光が揺れる。

それが、彼と俺の出会いだった。



「じゃあ早速始めようか」
部屋に戻るなり、彼は俺に触れてきた。
「前のパートナーがいなくなってから随分仕事が溜まっててね」
「そうか……」
「俺だけじゃ、どうしようもないし」
肩をすくめた、何処となく自嘲的な匂いのする笑みを彼はすぐに取り去る。
仕切り直すように改めて触れる指先が、見た目以上に華奢なことに目を見張った。
「始めるよ」
「ああ」
稟と立つ姿が窓辺の光を通す。
その透明は、俺を拒まなかった。
俺の黒はすぐ移り、軽やかな軌跡に続く。
彼の真摯な面持ちが光を返し、俺は目を細めた。
その間にも流れるような仕草で、彼は滑るように俺に触れる。
それは何処までも崇高で誇らしく、幸せなこと。
透き通るこの横顔を見ているだけで、胸が締め付けられそうだ。

彼の透明が、俺で染まっていく。

俺で、汚れていく。

綺麗な彼を、俺が汚している。
そう思った瞬間、酔いが回るような目眩がした。
芯を溶かすような快楽と、そのまま凝り固まってしまうような懲罰。
歓喜と後悔のないまぜになった感情。
綺麗な彼の、役に立つことが俺はできる。
綺麗な彼を、俺は汚してしまう。
俺は、綺麗な彼を汚すことができる。
酷く甘美な罪悪感と背徳的な愉悦。
ああ、気が触れそうだ!

「どうした?終わったぞ」
我に返ると、彼は不思議そうな表情で俺を見ていた。
「あ、ああ……ごめん」
「大丈夫か?まぁ、最初だしな」
気遣うような、彼の微笑みが有り難い。
その笑みの中に僅かな疲労の色が見えた気がして、俺は顔を寄せた。
「その……お前こそ、大丈夫か。なんか、疲れてる」
俺の指摘は予想外だったのか、彼は軽く目を見張る。
やがて困ったような顔で、くすくすと笑った。
「ああ、久しぶりだったからな。少しサボり過ぎただけだよ」
「なら、いいけど」
「じきに慣れる。俺もお前も」
そう云って微笑みかける彼を、窓の西日が赤く染める。
朱に染まりなお透明な彼。
「これからよろしく」
その透明には、俺の残滓がはっきりと刻まれていた。



綺麗だと思ったんだ。
あの時確かに愛しかったその透明が、こんなにも忌々しくなるなんて。



・・・・・
インク×ガラスペン。
いつぞやの無機物萌え。
続く……かもしれない。
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